痴漢の犯人を捕まえるにはどうしたらいいですか。
A.被害者や目撃者による現行犯逮捕がベストです。
容疑者を逮捕するには、それが法律に根拠がある逮捕の方法である必要があります。
逮捕には、通常逮捕、緊急逮捕、現行犯逮捕の三種類があります。
このうち「通常逮捕」とは、裁判所から逮捕令状をもらって行う逮捕で、最も原則的なものです。
また、「緊急逮捕」とは、重大な犯罪で、その人が加害者である可能性が極めて高く、逮捕に緊急を要する場合に、裁判所からの令状なくして逮捕できるものとするものです。
最後の「現行犯逮捕」とは、犯行中や犯行直後に逮捕することで、加害者を間違える可能性は極めて低いので、逮捕状は必要ないものとなっています。
「通常逮捕」と「緊急逮捕」については、一定以上の地位の警察官や検察官しかすることができませんが、「現行犯逮捕」は、被害者や目撃者など一般の人たちでもできることになっています。
痴漢は、その性質上、被害者やまわりの目撃者による現行犯逮捕がベストだといえるでしょう。
もちろん、あとから逮捕することも不可能ではありませんが、加害者を特定するのが非常に困難になりますので、事実上現行犯逮捕によるのが原則であると言えます。
犯罪行為が行われているその場で、勇気を持って加害者の手をつかんで、声を出すなどして周囲に助けを求め、取り押さえるのが一番よいでしょう。
犯人は逮捕後どのような取扱いを受けますか。
A.取調べを受け、場合によっては起訴されることになります。
現行犯逮捕された容疑者は、警察に引き渡され、その取調べを受けます。
警察官は、48時間以内に一定の捜査を終え、その容疑者を検察官に引き渡します。
警察官の捜査段階で容疑者が容疑を認めなかった場合には、厳格な要件のもとで検察官が裁判所に拘留の許可を申請し、これが得られると容疑者はその後も身柄を拘留され取調べを受け続けることになるケースもあります。
検察官は、警察官の捜査資料をもとに、24時間以内に再度容疑者を取り調べ、起訴(容疑者の処罰を求めて裁判所に訴えること)するかどうかを決定します。
なお、痴漢の場合、容疑者が初犯であり、また容疑を認めているような場合には、警察での取調べが終わるとすぐに釈放され、裁判も即日、短時間で終わる略式手続きがとられるのが普通です。
加害者を起訴するかどうかは被害者が自分で選択できるのですか。
A.起訴するか否かは検察官が決定するので、被害者が選択できません。
痴漢の容疑者を逮捕後、起訴するか否かは、検察官が決定するため、被害者が選択する余地はありません。
民事裁判では、被害者が加害者を訴えるかどうかを決めますが、刑事裁判においては、犯罪者をどのように裁くかは人によって異なる被害者の処罰感情に大きく左右されるべきではないと考えられているからです。
ただ、加害者と被害者との示談があった場合には、これによって不起訴となったり、情状によって処罰が軽くなったりすることはあります。
犯人にはどのような処罰がなされますか。
A.条例によって程度は異なりますが、罰金や懲役刑などが科されます。
痴漢行為によってどのような処罰が科されるかは、それを取り締まる各自治体の条例によって異なります。
一般的には、常習犯は懲役刑を受ける場合もありますが、初犯であれば罰金ですむという場合が多いようです。
しかし、痴漢に対する処罰は年々厳罰化される傾向にあり、たとえば、現行の東京都の条例によると、初犯でも懲役刑が科される可能性があります。
東京都の条例によると、初犯であれば6月以下の懲役または50万円以下の罰金が科され、常習犯であれば1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることになっています。
加害者の取り扱いにおいてよくとられるという略式手続きとは?
A.裁判所が、検察官が提出した書類の審査のみで処罰を決めるという簡便な方法です。
正式な刑事裁判手続きをとると、冒頭手続き、証拠調べ、求刑・弁論、判決という一連の手続きが必要となり、その間に何度も公判を重ねなくてはなりません。
被告人が起訴事実をすべて認め、まったく争わないような場合でも、最低2日は裁判所にいく必要があります。
これに対して、略式手続きというもっと簡便な方式があって、これを利用すると、裁判所は検察官が提出した書類の審査のみで処罰を決めることになります。
痴漢事件の場合、多くはこの略式手続きによるのですが、被告人の権利を保護するために、略式手続きをとるには被告人の同意が必要であるとされています。よって、被告人の同意がない場合には、正式の刑事事件手続きで裁かれることになります。