離婚の慰謝料とは
慰謝料は、一方の配偶者の不法行為により婚姻生活が破綻し、離婚せざるをえなくなったことによる精神的苦痛に対して支払われる損害賠償金です。
ですから、財産分与と異なり必ず請求できるものではありません。例えば、お互いの性格の不一致で離婚するような場合、通常慰謝料は発生しません。もっとも、裁判で性格の不一致と主張しさえすれば慰謝料を免れるというわけではありませんので、安易に捉えないで下さい。離婚の真の原因に暴力や悪意の遺棄(一方的な同居義務違反、生活費を渡さないなど)などが認定されれば、当然それらが慰謝料に考慮されます。
ちなみに、婚姻届を出していない内縁の解消でも、離婚に準じて扱われ、財産分与や慰謝料請求権が認められています。
内縁解消された場合は慰謝料を請求できない?
内縁とは、婚姻届は出されていないが結婚の意思をもって二人が同居している事実婚の関係をいいます。内縁の場合は、戸籍には夫婦として記載されていないので法律上財産分与や慰謝料を請求できないのかという心配がありますが、内縁関係を解消する場合も離婚に準じて財産分与の請求ができます。また、不当に内縁が破棄されたり相手の不貞行為などが原因で内縁関係が破綻した場合は慰謝料も認められます。
なお、結婚の意思のない同居はたんなる同棲であり、その場合関係を解消しても、慰謝料、財産分与は認められません。
離婚慰謝料の相場は
協議離婚や調停離婚では、慰謝料と財産分与をまとめて払う例が多く、慰謝料だけのデータはわかりづらいです。
ただ、裁判になった場合は、だいたいが500万円以内におさまっているようです。200万円、300万円あたりがもっとも多い層です。ただし、個別の事情(離婚原因の内容、有責性の度合い、婚姻年数など)によって異なりますから、自らのケースが判例や統計通りになるとは限りません。
慰謝料が高くなる要素としては、次のようなものが考えられます。
1、有責性が高い
2、精神的苦痛、肉体的苦痛が激しい
3、婚姻期間が長い、年齢が高い
4、未成年の子がいる
5、有責配偶者に資力がある
6、有責でない配偶者に資力がない
7、財産分与による経済的充足が少ない
離婚慰謝料の支払方法は?
慰謝料請求する側は、相手に支払能力がある場合はできるだけ一括払いにしてもらうほうがいいでしょう。例えば、500万円の5年払いよりも300万円の一括払いの方が得だと言えることもあります。経済事情というのは突然変わることがあるものですし、滞納トラブルはよくあることですので分割払いはできるだけやむをえない場合にとどめるべきです。
万一分割払いになるときは、協議で離婚した場合は、離婚協議書の作成し、公正証書にしておいたほうがいいでしょう。複数回や長期にわたって滞納されたときの請求は、内容証明郵便を使うとよいでしょう。
調停で離婚した場合は、相手が支払いをまもらないとき、家庭裁判所に申し出ると履行勧告や履行命令をしてくれます。どちらも強制力はありませんが、履行命令にしたがわないと10万円以下の過料に処すことができるとされています。
これらの請求にも応じない場合は、最終的には、裁判所に強制執行を申し立て、給料や財産を差し押さえて取り立てることになります。なお、協議離婚で公正証書がない場合、いきなり強制執行を申し立てることはできません。その場合は、まず訴訟をおこして判決を得る必要があります。
離婚するときに慰謝料をもらわなかったが今からでも請求できるか?
慰謝料請求権は、相手の不法行為を知ったときから3年で時効により消滅するとされています。(民法724条)ですから、通常は離婚のときから3年以内であれば請求できます。なお、財産分与については離婚から2年経過すると請求できなくなります。
時効が近づいていて差し迫っているときは、とりあえず内容証明郵便による請求をして、いったん時効を中断することができます。ただし、その場合、6ヶ月以内に裁判所に調停や訴訟などを申し立てないと時効で請求権が消滅してしまいます。